山田洋次監督。松たか子主演、倍賞千恵子、吉岡秀隆、黒木華。2014年。
<ストーリー>
大学生の健史の大叔母であったタキが亡くなる。遺品の中には赤い屋根の家の絵があったが、健史の父の一言で処分される。そのうち、健史宛ての品が見つかる。開けてみるとタキが健史にうながされて大学ノートに書き記していた自叙伝があった。健史はそんなに明るい時代じゃなかったんじゃないの、というが、タキには未来に満ちた時代に思えたのだった。恋愛の話も書いてよ、という健史だったが、タキはそんなのはなかったといい、生涯独身を貫いた。
昭和11年、タキは山形から上京し小説家の女中となるが、その後、小説家の妻からの紹介でおもちゃ会社の常務をしている平井家へ奉公に上がる。平井家は東京郊外にあり、昭和10年に建てられたばかりの少しモダンな赤い瓦屋根の小さいおうちだった。平井とその妻・時子、かわいらしいが小児まひになった息子・恭一らとの穏やかな暮らしが続く。時子は美人でやさしく、『風と共に去りぬ』を愛読する聡明な女性であった。
だが、おもちゃ会社に新しく入った芸大卒の青年・板倉の出現で状況は一変する。板倉は平井家にストコフスキーのレコードを見つけ、彼が出演したディアナ・ダービン主演映画『オーケストラの少女』の話で時子と話が盛り上がる。夫が行けなくなった演奏会でも出会い、帰りに近藤書店で買った『タンクタンクロー』を恭一の土産に渡す。台風が来た時、雅樹が出張先から戻れないことを報せに駆けつけた際には、2階の雨戸を固定した後で一晩泊まっていった。 おもちゃ会社の存続のために板倉を打算で結婚させようとする平井は、時子に板倉の説得をするように言う。板倉の下宿に通ううちに時子の気持ちが揺れ、恋愛へと発展し、タキはその狭間で悩んでしまう。
丙種合格で徴兵されなかった板倉も、戦況悪化とともに徴兵されることになり、平井家に別れの挨拶に来るがそそくさと帰る。翌日、餞別を贈りに行こうとする時子をタキが説得して手紙を書かせる。その手紙を託されたタキはある決断をする。その日、板倉は現れなかった。
戦局とともにタキは田舎に帰るが、後に東京大空襲で平井と時子が防空壕で抱き合って焼死したことを知る。その後、みんなどうなったか、タキは号泣してしまい、分からずじまいだった。「私、長く生きすぎたの」と述懐することもある。
タキの死後、遺品の中から封がされたままの手紙が出てくる。大学を卒業した健史は書店で恋人から絵本『ちいさなおうち』をプレゼントされ、店内の「イタクラ ショージ」の展覧会のポスターを目にする。調べてみると板倉が戦争を生き延び、画家になったことを知る。イタクラの記念館には赤い屋根の家が描かれた作品があった。板倉は独身を貫いたようだった。3年前に平井家の息子と連絡をとったことがあると学芸員に聞かされた健史は、恋人と共に彼の住む石川県に向かう。
既に盲目となり、歩けなくなった恭一は手紙を開封して読んでもらう。「今日のお昼過ぎ一時ごろにお訪ねくださいませ。どうしてもどうしてもお会いしたく思います。必ずお訪ねくださいませ」と書いてあった。それを聞いた恭一は「この歳になって母親の不倫の証拠を見るとは」と嘆いた。海岸を3人で散歩する中、恭一が海が好きだ、昔よく板倉とタキに江ノ島に連れて行ってもらった、二人はお似合いだったよ、とポツリ。みなでタキのその時の気持ちを噛み締めるのであった。(Wikipediaより転載)
<感想>
良い映画でした。淡々とした展開ですが、引き込まれます。「長く生きすぎた」の台詞には泣けました。
タキがあの絵を持っていたということは、板倉と連絡を取っていたということですよね。私は2人は独身を通したけれど、実は両思いだったのではないかと思いました。時子がいた時は彼女の魅力に押されていましたが、板倉はタキにも十二分に惹かれていたし、恭一の言う通り、二人はお似合いでしたからね。と、タキ贔屓な意見でした。