シェリー・ホーマン監督。リヤ・ケベデ主演、サリー・ホーキンス、ティモシー・スポール。2009年。
<ストーリー>
アフリカのソマリア。遊牧民の貧しい家庭で育ったワリス・ディリーは、13歳の時、お金と引き替えに老人と結婚させられそうになり、家を飛び出した。広大な砂漠を命からがら逃げ出し、親戚のつてでロンドンのソマリア大使館でメイドとして働くことになる。ところがソマリアで内戦が勃発し、大使館は閉鎖。ワリスは不法滞在のまま、路上生活を送り始めた。ところがある日、服飾店で働く女性マリリンに運命を感じたワリスは、彼女の部屋に転げ込み、マクドナルドの清掃係の仕事を紹介して貰う。そこで有名なカメラマンにスカウトされ、モデルへの道を歩み始める。しかし彼女はFGMという衝撃の過去を持っていた…。
<感想>
FGM、女性性器切除廃止の活動をしている実在のモデル、ワリス・ディリーの実話。
トップモデルへと成長するシンデレラ・ストーリーと、FGMというアフリカにある習慣廃止を訴える、2つのお話が軸になっています。
圧倒的に印象に残るのは後者です。その存在は知っていましたが、具体的な行為の内容、女性達が受ける苦痛を、初めて目の当たりにしました。忘れられないシーンは、ワリスが病院に行き、医師が通訳のためにソマリアの男性看護師を呼んだところです。医師が優しく手術をすれば痛みを軽減できるからといった事を言っているのに、看護師は通訳をしている振りをしながら、ソマリアの伝統をないがしろにするのかとワリスを罵倒するのです。彼のように異国で働き、医療の知識がある者でも、そういう考えを持っているのかと、慣習の根深さに愕然とし、字幕が間違えているのかとすら思いました。
一方、サクセスストーリーの方は描き方が浅く中途半端で、ビザの問題以外では何の問題もなくトップモデルになってしまうのが、お伽噺のように見えました。おそらくFGMの方に重点を置いたためだと思います。その点は残念でしたが、ワリス役のモデルの方は本当に美しく、その点ではとても説得力がありました。
野蛮な慣習FGMで苦しむ女性が、一人でも少なくなりますように…。