小津安二郎監督。笠智衆主演、岩下志麻、佐田啓二、岡田茉莉子、東野英治郎、杉村春子、岸田今日子。1962年。
<ストーリー>
平山周平は初老の会社員で、妻をだいぶ前に亡くし、24になる娘の路子と次男で学生の和夫の3人暮らし。長男の幸一夫妻は共働きをしながら近くの団地に住んでいる。学生時代から仲の良い河合や堀江とよく酒を呑み、そろそろ路子を嫁にやれと言われるが、そんな気はまだなかった。ところが中学時代の漢文教師、ヒョウタンこと佐久間清太郎先生を迎えてのクラス会の後、可愛かったヒョウタンの娘の伴子が妻を亡くした父の世話をする内に婚期を逃し、今は場末のラーメン屋をしているヒョウタンと空しい日々を送っているのを見て、ああはなりたくないと思う。そして娘を結婚させようと動き出す。路子が幸一の友人、三浦を好きらしいと知り、幸一から訊いて貰うが、三浦は少し前に別の人と約束してしまったと言う。それを伝えると、父の前では気丈に振る舞っていた路子も、後で泣いていた。自分が動くのが遅かったせいだと周吉は、河合の紹介してくれた縁談を進めることにした…。
<感想>
ここらでカラー作品も観てみようかと思い、どうせならどのくらい変わっているか観てみようと、最後の作品を選びました。例によって娘を嫁にやる話ですが、原節子ではなく、岩下志麻です。おおー、若い!と思いましたが、頑なな感じが良かったです。でも原節子と違って、あくまで脇役で、登場シーンは少なく、彼女の心の動きはほとんど分かりませんでした。
印象に残ったシーンがたくさんあります。東野英治郎演じるヒョウタンの悲哀、娘の伴子の怖さと悲しさ。岸田今日子のバーでの軍艦マーチ。忘れられません。一方で、主人公である周平の印象はとても薄かったです。説明、進行役に徹していた気がします。
また、長男夫婦や路子の家での会話には驚きました。女性は皆、あんなに刺々しかったのでしょうか。そう言えば、和夫の父への話し方もちょっとぞんざいに感じました。当時はきっとそういうものだったのでしょうけれど、娘の結婚に、家族総出で動くというのも、やはりかなりの違和感です。
戦後日本の様子がうかがえる、ユーモアとペーソスを兼ね備えた興味深い作品でした。