アン・リー監督。スラージ・シャルマ主演、イルファン・カーン、アディル・フセイン、レイフ・スポール。アカデミー賞監督賞受賞作品。カナダ人作家ヤン・マーテルのブッカー賞受賞のベストセラー小説『パイの物語』原作。2012年。
<ストーリー>
1960年代初め、インドのポンディシェリにピシン・モリトール・パテルは生まれた。ピシンはパリのプールの名前だが、友人からはPissingとふざけて言われ、それが嫌で、自分の名前を「パイ」と呼ばせることにした。兄と両親の4人暮らし。父親は動物園を経営し生計を立てていた。16歳の年、転機が訪れる。両親が動物を売り、カナダへ移住することを決意したのだ。アメリカで売る予定の動物を一緒に船に乗せ、一家はカナダへと進むが、太平洋の真ん中で嵐に巻き込まれ沈没。パイは救命ボートにしがみついて一命を取り留めたが、ボートには書類上のミスでリチャード・パーカーと名付けられたベンガルトラも隠れていたのだ。一頭のトラとの227日にも及ぶ想像を絶する漂流生活が始まった…。
<感想>
何とも奇妙なお話だなと思っていましたが、まず映像の美しさに圧倒されました。ここに神がいる、と思えました。これだけでも一見の価値有りです。
リチャード・パーカーという名前はとても意味深な名前で、エドガー・アラン・ポーの小説で、漂流して仲間に食べられた男の名前であり、また約50年後、実際に難破したミニョネット号で、仲間の食料となった少年の名前でもあります。そんな虎とのサバイバルがこの映画のテーマではありません。ラスト、パイが話すもう一つのお話。その中に今までのお話のいろいろな意味が隠されていて、そうか、そういうことか、とじわじわと感動が襲います。謎の島、ふり返らずに去った虎、それはこういう意味なのかな、とあれこれ考える楽しみのある映画です。アカデミー賞受賞、伊達ではありませんでした。