小津安二郎監督。笠智衆主演、原節子、東山千栄子、杉村春子。1953年。
<ストーリー>
尾道に住む周吉、とみの老夫婦は、子ども達に会うために東京へやってきた。途中、大阪で三男の敬三に会い、東京では長男の幸一の家に滞在。町医者をやっている幸一は両親を歓迎しながらも、仕事が忙しく東京見物にも連れて行けない。長女の志げの家は美容院を営み、やはり忙しい。そこで亡くなった次男の昌二の未亡人、紀子が仕事を休み、はとバスツアーに連れ出した。時間を持て余す両親に、幸一と志げは2人を熱海旅行へと送り出した。しかし若者向けの宿で2人は心休まらず、すぐに帰ってきてしまう。志げに泊まる場所がないと言われ、とみは紀子の元へ、周吉は旧友に会いに行き、しこたま飲んで帰ってくる。こうして尾道に帰った2人だが、すぐに末娘の京子から母とみが危篤との電報が入る…。
<感想>
メインの登場人物の名前が『晩春』と同じ、周吉と紀子、このへんに監督の何かこだわりがあるのでしょうか。思わず続編?かと思いましたが、設定は全く違いました。
実子達の素っ気ない態度に、観ていてイライラしました。久し振りなのだから、もっと優しくしてあげれば良いのに…歓迎していない訳ではないのです、でも自分の生活に忙しすぎる。親だからこそ甘えてしまうこの感じ、分かります。そして血の繋がらない紀子の方が親切に接しているのは、紀子の性格もあるのでしょうが、元は他人というのも大きい気がしました。けれど親はそんな実子達のことを非難したりはせず…親ってそういうものだと思います。旧友との会話も切なくなりました。
そして母の危篤…孝行したい時に親はない、ほれ見たことかと思う反面、では自分は?どれほど違いがあるのか?と心にぐさりと来て、親を思い胸が痛くなりました。とみが助からないと知った時の、周吉の台詞に涙、涙。ラストの紀子と京子の会話に、自分のことを思い、何て鋭い映画だろうと思いました。名作です。