SAUL FIA / SON OF SAUL  サウルの息子

ネメシュ・ラースロー監督。 ルーリグ・ゲーザ主演、モルナール・レヴェンテ、ユルス・レチン、トッド・シャルモン、ジョテール・シャーンドル。アカデミー賞外国語映画賞受賞。2015年。

サウルの息子(字幕版)

<ストーリー>
1944年10月のある日、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所でゾンダーコマンドの一員として死体を処理していたユダヤ系ハンガリー人ウースランデル・サウルは少年の死体を見つけ、それを自分の息子の遺体だと思い込む。少年はガス室に送られた後もまだ息をしていたため、解剖の対象に指定される。サウルは少年の体をユダヤ人の囚人医師ミクローシュに届けるよう命令されるが、彼に頼み込んで解剖が行われるのを阻止する。そしてサウルは自分の息子だという死体にユダヤ教に則った埋葬を施すため、ラビを探すことにする。
同じゾンダーコマンドの隊員アブラハムはカポ長のビーデルマンに反乱計画に加わるよう打診するが、ビーデルマンは、収容所の惨状を写真に記録し、その写真を外に持ち出して助けを求める計画の方を支持する。サウルは撮影の援助を申し出ると、別の囚人とともにカメラの隠された小屋へ行くように指示される。サウルは、彼の友人ヤンクルから別のゾンダーコマンド部隊に「背教者」と呼ばれるラビがいることを知る。サウルと他の囚人たちは小屋に向かい、サウルが小屋の錠前を直すふりをしている間に別の囚人が小屋の影で死体焼却の現場を撮影する。
その場に別のゾンダーコマンド部隊を乗せるためのトラックが到着し、サウルは部隊に紛れ込んで同乗する。トラックは付近の川辺に行き、囚人たちはそこで焼却された死体の灰を川に捨てるよう命令される。川辺でサウルは「背教者」を見つけるが、背教者はサウルを助けるのを拒否する。サウルがさらに迫ると、背教者は入水を試みる。サウルは背教者を救い、二人は親衛隊曹長ブッシュの許に連行される。尋問の後、サウルは部隊に戻ることを許される一方、背教者は処刑される。
収容所に戻ったサウルはアブラハムから指示を受け、女性収容所に向かいエラという女性から火薬を手に入れる。サウルは女性収容所から戻る途中、収容所に着いたばかりのハンガリー系ユダヤ人の大群に巻き込まれる。彼らは歩かされた先の森で射殺・焼却されている。サウルはここでもラビを探そうとすると、ラビだと名乗る男ブラウンに出会う。サウルは彼にゾンダーコマンドの服を着せて身元を偽り、収容所に連れ込む。この騒ぎの過程でサウルは火薬を紛失する。
その夜、サウルは親衛隊曹長ヴォスに呼ばれ食卓を片付けるように命令される。その部屋でビーデルマンが囚人の名前のリストを書いてヴォスに提出するよう命令されているのに遭遇し、サウルは所属する部隊の死期が近いことを覚る。
ビーデルマンが親衛隊によって殺されたことが分かると、アブラハムら囚人たちは反乱を開始する。少年の死体を抱えたサウルはブラウンや他の囚人たちとともに収容所を脱出し、森へ逃げ込む。サウルは死体を埋葬しようとするが、ブラウンはカッディーシュを暗唱できず、サウルは彼がラビではなかったことを知る。サウルは追手が来るのを察知し、川に逃げ込むが、少年の死体は水流にのみ込まれてしまう。サウルたちは森の中の納屋に逃げ込み、ポーランドのレジスタンスとの合流を画策する。納屋でサウルは一人の農民の少年が彼らを覗き込んでいるのを見つけ、微笑む。少年が納屋から離れると、武装した親衛隊が納屋に向かい、銃声が響く。映画は森の奥に去っていく少年を写して幕を閉じる。 (Wikipediaより転載)

<感想>
こういう仕事があったことは知っていましたが、ゾンダーコマンドという名だったのは初めて知りました。映画を観た後に調べたところ、こういうゾンダーコマンドによる反乱は、実際にいくつかの収容所であったようですね。残念ながら、成功して逃げおおせた例は、ごくわずか、という感じでしたが。
さて、映画では狂信的なほどにサウルがラビ探しをします。少年は本当の息子ではないのですが、彼にとっては息子の代わりなのでしょうね。そのせいで人は死ぬわ、火薬は無くすわ、傍迷惑なことこの上ないのですが、こういう時だから、精神状態が、ということなのかな。それだけこだわっていた割に、川で遺体を無くしてしまうし…まあ、どうしようもないですけど。そしてラストの微笑み。実はずっとこのサウルに気持ちが寄り添えないでいたのですが、この表情を見た時、急に彼が可哀想になって、泣きたくなりました。彼は少年に息子=希望を見たのではないでしょうか、そう思ったら、泣けましたね。分からないですけど。