嫌われ松子の一生

中島哲也監督。中谷美紀主演、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子。2006年。

映画「嫌われ松子の一生」

<ストーリー>
川尻笙はミュージシャンになるために上京していたが、挫折し、恋人にも振られた。すさんだ生活の中、いきなり父親が訪ねてきて、頼みがあるという。それは河川敷で殺された川尻松子(53歳)の部屋の片付けだった。隣人曰く、嫌われ松子と呼ばれていたという、会ったこともない伯母は、どんな人間だったのか。昭和22年、福岡で長女として生まれた松子は、お姫様のような人生を夢見る女の子だった。妹が病弱で父の愛を独り占め状態だったため、父に好かれようと教師になった。しかし窃盗をした生徒を庇ったトラブルから辞職に追い込まれ、家を飛び出し、坂を転げるように転落人生を送るようになる…。

<感想>
お話は、ここまでするか、というほどに不幸の連続の悲惨なものなのに、花や小鳥が舞い踊るファンタジーな演出と音楽で明るい仕上がりになっています。ミュージカルシーンの曲がまた良いです。耳に残りました。女性を殴るシーンには辟易ですが、もうダメだと思っても思っても、また立ち上がろうとする松子に人間の強さと悲しさを感じました。嫌われ松子と言いつつ、皆に愛されていた彼女。私も彼女が愛おしいです。中谷美紀の熱演に脱帽です。
ラストでは号泣でした。多分、監督の意図とは違うのでしょうが、最期、人は自分が生まれ育った家に帰っていくものなのか、と。例え自分に配偶者や子どもがいても、死ぬときは自分が子どもの頃に育った家、両親、兄弟に魂は帰るのかも知れません。亡くなった父のいる家を思い出し、涙が止まりませんでした。一方で、父も生まれ育った大島の家に帰ったのかな、とも思いました。ラストシーンが忘れられない映画となりました。