オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督。モーリッツ・ブライブトロイ主演、クリスチャン・ベルケル、オリバー・ストコフスキー、ユストゥス・フォン・ドーナニー。2001年。
<ストーリー>
タクシー運転手のタレク・ファアードは、大学で模擬刑務所という心理実験の被験者を求める広告を新聞で見付ける。期間は2週間、報酬は4千マルク。タレクはこれに参加してレポートを書き、記者として復活しようと考えた。面接に受かり、出版社からOKを貰うと、カメラの付いた特殊な眼鏡を入手。そして明日が実験初日という前夜、父親の葬儀帰りというドラという女性の乗った車がタレクのタクシーに突っ込んできた。幸いお互いに怪我はなく、タレクは放心状態のドラと一夜を共にする。そのまま連絡先だけを残し、タレクは実験会場へと向かった。20名の男性が看守役と囚人役に分かれ、囚人役は模擬刑務所の監房に入れられた。囚人は番号で呼ばれ、看守には敬語を使い、指示には絶対に従わなくてはいけない。最初はお遊び気分だったが、タレクがレポートを面白くしようと看守を挑発、全囚人が参加しての大騒ぎとなり、それを抑えるために頭角を現したのは看守役のベルスだった。タレクと同じ監房のシュタインホフは軍人で、軍の上層部に伝える役目を持って実験に参加していた。タレクの目的を察知し、挑発は危険な自体を招くと警告する。日が経つにつれ囚人達の精神衰弱は極まり、看守達は過激になっていく。この様子に実験助手が教授に中止を要請するも、教授は拒否。そしてついに思いがけない恐ろしいことが…。
<感想>
ドイツのシチュエーション・サイコ・ムービー。
1971年にアメリカのスタンフォード大学で行われたスタンフォード監獄実験を元にした映画です。実際にはすぐに中止したので大事には至りませんでしたが(その後、裁判沙汰にはなったようです)、この映画ではとことん悲劇までいっています。ドラの存在が必要あったのかなとか、ちょっと疑問に思う点もありましたが、人間は状況でここまで変われるのかという恐怖はバッチリと伝わりました。ベルスがまた憎々しげで、ドイツだけにナチスはこんなだったのかなとつい想像してしまいました。彼らも普通の人だったのかも知れません。「お前が始めたんだろ」という台詞に、全くだ、やり過ぎだったよなと思いました。元はと言えば、こいつが悪い。シュタインホフが格好良かったのが救いです、そして自由になるとさすがに強い。それにしても、どうしてこんなことになるのか。余りの理不尽さに、観ていてここまで気分が悪くなったのは久し振りです。ありきたりですが、一番怖いのは人間かも知れないですね。